“ ぶらり自然観察人 ”  成田西陵高校の [ 研修農場・蝶の生態館 ] (パート1)

“ 千葉県立成田西陵高等学校 ” は、専門の5学科を設け、研究と実践を通じてのユニークな教育を実施している公立高校です。昨年の夏頃に蝶のことを調べていて知ったのですが、私が特に注目させられたのは、日本で初めての[ 蝶の生態館 ]を持つ高校だったことです。そして、4月から9月までの第4土曜日には、一般公開されていました。私が酒々井町に越してきた理由の一つは、近くに “ 成田西陵高等学校 ” があったからかもしれません。早速5月26日と6月23日の第4土曜日に同校を訪れました。[ 昆虫館・蝶の生態館・ふれあい動物園 ]は、地域生物研究部に所属する生徒さん達により運営されています。それだけでも素晴らしい事だと思いますが、生徒さんと対話して、それにも増して感心したことは、皆さんが強く未来の夢を持って学習されていることです。先生方の指導方法が優れていると云う証明でもありますね。



《 農場風景 》
この高校は、校舎・校庭・グラウンド、そして、この農場を含めた敷地は広大で、周囲は豊かな自然に包まれています。生徒さんの話では、子どもの頃この学校に遊びに来て、どうしても入学したくなったのだそうです。農作物や草花は、訪れた人に安価で販売をしています。野菜や果物は、前もって問い合わせをしないと、なか、なか、手に入らないようです。当日は、私も草花は買えましたが、野菜の販売をしていませんでしたので、購入出来ませんでした。
〈 農場案内板 〉


〈 農作物畑 〉


〈 案内所 〉
同校の卒業生が手伝いに来ていました。


〈 施設配置図 〉



《 昆虫館 》
昆虫の標本展示の他、奥の部屋では飼育もしています。


※ 千葉県学校農業クラブ連盟 第60回研究発表大会 “ 最優秀賞 ” の表彰状


※ 国立科学博物館 平成23年度 “ 野依科学奨励賞 ” の表彰状と表彰額
同校教諭 清水敏夫先生は、地域生物研究部を発足させ、[ 昆虫館・蝶の生態館 ]の設置指導、農作物の害虫「ヨトウガ」の幼虫「ヨトウムシ」を、天敵「エゾカタビロオサムシ」を使っての、駆除方法の研究功績により、同賞を授賞されました。農薬を使用しない有効な方法なので、やりかたについては、公表しても良いと了承頂きましたが、少々自然生物の説明が必要なので、記述は別の機会にします。(注: “ 野依科学奨励賞 ” は、ノーベル化学賞授賞 野依良治氏の功績を顕彰設置された)



《 ふれあい動物園 》



《 農作物・草花の栽培温室 》



※ 「メロン」の栽培



※ 「トマト」の栽培



※ 「キュウリ」の栽培



※ 「草花」の栽培



《 蝶の生態館(その1) 》
この生態館には、主に沖縄諸島に生息する蝶が飼育されています。ここでは、地域ボランティア数人が手伝いをされています。その人の話では、当然、蝶の幼虫の食草も暖地に生育する植物ですので、冬季の管理は大変なようです。蝶そのものも、温暖な南房総の熱帯植物園の温室に預かってもらうのだそうです。



※ 「イシガケチョウ」の食草 「イヌビワ(犬枇杷)」
暖かい地方の山地に生える、雌雄別株の落葉低木です。「イシガケチョウ」の食草ですが、残念ながら、今は、この生態館にはいないそうです。



※ 「ジャコウアゲハ」の食草 「ウマノスズクサ(馬の鈴草)」
暖地の林縁などに生える、蔓性の多年草です。ラッパのような奇妙な花を着けますが、私は図鑑でしか見たことがありません。是非、実物を見たいものだと願っているのですが‥‥。葉の匂いを嗅いで見ると、強い臭気がしました。



ジャコウアゲハ
ジャコウアゲハ」の幼虫は、「ウマノスズクサ」の葉を食草にしています。「ジャコウアゲハ」の成虫は、天敵から身を守るために体内に毒を蓄えていますが、この植物から取り入れているようです。この蝶は、元は暖地に生息していましたが、地球温暖化により「ウマノスズクサ」の北上に合わせて、関東地方にも進出して来ました。この辺りでは、屋外でも見ることができます。地球温暖化が、良いのか?、悪いのか?、生き物それぞれの立場の違いもあり、判断が難しいところですが、長期的には自然の生態系にマイナスになると考えますね。

※ オス


※ メス


※ 「ウマノスズクサ」の葉裏に生み着けられた “ 卵 ”



オオゴマダラ
日本の蝶の中では最大級で、開帳幅(翅を広げた寸法)は12cmほどあります。冬の沖縄へ行った時に実物を見ていますが、印象は、とにかく、大きいなぁ!、と、思いますねぇ。これが「タテハチョウ」の仲間だとは、考え難いのです。資料によれば、幼虫の食草は「ホウライカガミ」など、と、書かれています。熱帯や亜熱帯の植物は、殆ど馴染みがありませんので、良く分かりません。



※ 美しい “ 蛹 ”



リュウキュウアサギマダラ
開帳幅は8cmほどの、タテハチョウの仲間です。この蝶も沖縄で見てきていますので、手伝いの地域ボランティアの人に「リュウキュウアサギマダラ」もいますね、と、話しかけると、いや、いないはずです、との答え。その理由は、幼虫の食草が枯れてしまったから、とのことでした。その後に、生存を確認してもらったのですが、どうして生きているのか分からない、と、仰っていました。帰宅して資料を調べましたら、食草は「ツルモウリンカ」など、と、書かれていました。たぶん “ など ” の草を食べて成虫になったと思われますが、その植物は分かりません。
※ オス


以下 (パート2) へ