“ ぶらり自然観察人 ”  大晦日の間近になって 「 ホタル 」 の話とは!?

晦日を間近に控え、今年最後の自然散策に隣町へ出かけました。近隣公園の隣に大きな調整池があり、そこを水源とした小川が流れています。
小川沿いに下っていくと、湧き水がチョロチョロと流れている、小さな溝の傍に立っていた人から、声をかけられました。県立船橋芝山高等学校で「ホタル」の保護活動をされている、関係者と勘違いをされたようです。その人は地元の不動産業者で、「ここを開発する予定なのですが、この湧き水に 『 ホタル 』 が生息しているとの情報があり、何とか保存する方法がないか、保護活動している皆さんと話し合うのです」と話されました。そこで、一行の到着を待って、私も立ち合わせてもらうことにしました。
私が船橋北部で野生の「ホタル」を見たのは、15年ほど前が最後でした。まだ、生息しているとは!、また、高校生が保護活動をしていると聞き、驚きと感動が湧いてきましたので、指導されている先生のご了承を得て、ここに取り上げてみました。
余談ですが、「ホタル」と同時期に、昔懐かしい、赤とんぼの一種「ミヤマアカネ」もいなくなりました。


先生や関係者の説明を受ける生徒達 (奥の葦が生えているところが、地下水の湧き出る湿地帯)


ヘイケボタル」が生息する、小さな溝 (溝の左側が湿地帯)


この問題は、私達人間の生活にも不可欠な “ きれいな水 ” とも深い関わりがあります。私が地域のボランティア活動をしていた時、地域の広報紙の編集・発行の責任者をしていましが、地域自然保護活動の一環として、執筆・編集をしてきた記事の中に、「ホタル」の生育環境の復元について、自然観察指導員(日本自然保護協会認定)のTさんに、インタビューしたことを思い出しました。主に「ゲンジボタル」の飼育についてですが、その中で特に重要だと思われる話がありました。その後、Tさんの案内で佐原市の飼育場に連れて行ってもらい、数匹の「カワニナ」を持ち帰って飼育しましたが、大変な事も分かりました。9年余り前の話ですが、私自身の復習と、これからの若い人達に、多少なりとも参考になることを願い、地域関係者と相談のうえ、長文なのでTさんの言葉のみを抜粋し、掲載することにしました。


インタビュー記事の抜粋
(‥前文省略‥)
「私の知人でSさんという、もう80歳を超えた方がおられます。佐原(市)の水郷地帯の地主で500坪の屋敷があります。庭に飼育施設を設けてホタルの飼育をやっておられます。何分お年ですので、私が相棒として一緒にやる機会に恵まれました」
「源氏蛍(ゲンジボタル)の幼虫は、生まれたばかりは、1ミリあるかなしかの大きさで、サナギになる前の終齢幼虫(15ミリ)までカワニナ(巻貝の一種)を餌としますが、(‥中略‥)カワニナが蓋を開いた時を狙って嘴を差し込み、麻酔薬液を注射し、消化液を出して吸い込んでいきます。そのため幼虫とカワニナのサイズは、ほぼ同じである必要があります。ホタルの飼育を成功させるためには、カワニナ飼育の成功の方が大切です。(‥以下省略)」
「なぜ、こんなことをやっているのか(‥中略‥)よく聞かれます。ひところ終齢幼虫で400〜500円、成虫で500円くらいで取引され、ホテルなどでホタルを放す催しが流行った(‥中略‥)1万匹といったオーダーで取引されました。東日本では大量のホタルはいませんので、西の方から仕入れます。ところが、生物界は富士川糸魚川を境に東部と西部に分かれ、遺伝子が違います。放たれたホタルは、自分の育った環境を求めて移動し(‥中略‥)結局見つけられず(‥中略‥)子孫を残さず死滅します」
「ホタルを残すためには、棲息できる環境を整えてやることが先決で(‥中略‥)昔は住んでいたのに、いなくなった、という場所もあります。このような場所には環境改善を行った上で、佐原(市)で育てたホタルを放し、復旧をはかっています。実作業は地味で苦労が多いため、共にやろうという人を探すのに苦労をしています」
「環境を整えるということは、めったやたらの(カワニナやホタル)放流をできないということです。そこにいたホタルの遺伝子を、そこに復活させることが大切です。(‥以下省略)」
「環境は一にも二にも水です。水はすべての生物の命の根源です。(‥中略‥)蛍が住めるということは、(‥中略‥)人間にとっても良い環境といえます」
「ホタルにとっての最大の難敵は除草剤です。なかでも田んぼに撒く除草剤・殺虫剤はそれほどでもありませんが、土手(畦)に撒かれる除草剤は強烈です。(‥中略‥)しかし、農家の方々に部外者が(‥中略‥)除草剤を撒かないようお願いすることは、ちょっとできません。(‥以下省略)」
「私の知人で不耕起栽培というものに取り組んでいる人がいます。(‥中略‥)好気性バクテリアの発生がすごく、サヤミドロという藻が発生します。光合成の能力が極めて高く、田んぼの水がものすごく浄化されます。普通の田んぼの数倍です。今ではトンボ・ホタル・メダカがみられるようになりました。(‥以下省略)」
(‥‥以下、河川水の浄化・ビオトープの作り方提案及び復旧の成功例を省略‥‥)

追記:ゲンジボタル」の餌になる「カワニナ」は、人が飲めるぐらいの綺麗な水に生息します。ですから「ヘイケボタル」より自然豊かな上流の、きれいな湧き水など、水源近くでないと生きられません。