[ふなばしアンデルセン公園]の美しい蝶 (チョウ) 「アサギマダラ」 “ 体内時計 ” 再考

10月中旬に入ってから天候に恵まれず、“ぶらり自然観察人”の活動も停滞気味、と、云って、家でウジウジとしているのは健康のためにも最悪、で、あります。この時期は生き物たちの活動も一段落し、目ぼしい場面に遭遇できないことは分かっているので、ただ、ただ、健康のために歩く(10km以上)ことを目的に、半月ぶりで[ふなばしアンデルセン公園]に訪れました。
ウィークディのうえ、少々寒い曇天のため“太陽の池”の周りには人も疎ら、「私だけの公園」の気分になって、ぶらぶら、と、水源近くの里山を進んでいくと、遊歩道沿いに「フジバカマ」が一かたまり咲いていました。「そうそう、フジバカマの良い写真がなかったなぁ」と気がつき、撮影のために近寄って行くと、びっくり‥‥、突然花が飛び上がったように見えたのです。あっ、「アサギマダラ」かも?、期待にワクワクしながら駆け寄りました。昆虫採りの網を持った家族連れもいないので、「アサギマダラ」は悠々と花から花へと飛び回り、エネルギー補給をしていましたが、私も十分なお付き合いさせてもらい、絶好の撮影ポジションが確保できて、手ごたえのある写真を何枚も撮ることができました。
前置きが長くなってしまいましたが、本題に入りたいと思います。私のブログ、7月28日付け“船橋北部周辺の美しい渡り蝶「アサギマダラ」”でも取り上げましたが、今回[ふなばしアンデルセン公園]でこの蝶に再会したことを機会に、もう一度この蝶について調べてみようと考えたのです。そして、調べるほどに興味深いことが分かってきました。
そこで、先ず最初に改めなくてはならないことは、蝶の数を数えるとき、今までは知らずに“匹(ひき)”と称していましたが、正しくは馬や牛のように“頭(とう)”と云うらしいのです。知っていましたか?。日本語は難しいのか、厄介なのか、何か深い意味があるのでしょうかねぇ?。うーん、どうしましょうかねぇ?、“匹”と云うのに慣れてしまってますのでねぇ、“頭”では違和感がありますねぇ。やはり“匹”でいきますかぁ!。
気になったので辞書を調べてみましたが、昆虫の数え方については分からずじまい、ただ、馬や牛も“頭”が正しいようですが、今は“匹”でも通るようですねぇ。犬や猫は昔から“匹”だそうです。



[ “ 渡り蝶 ” の体内時計遺伝子 ]
季節に合わせて渡りをする蝶は世界的にも珍しく、最も有名なところでは、「オオカバマダラ」のようにアメリカ北部からメキシコまで、毎年3,000kmにも及ぶ距離を、数千万匹の大群が往復移動します。このような長距離の移動は一世代では無理らしく、途中で数回子孫をつくりながらのことですが、その子孫が迷わずに目的地を目指すことができる能力は謎とされています。テレビでも放映されましたので、ご覧になった方もあると思います。また、プロカメラマンによる素晴らしい映像も、インターネットで一般公開されています。
日本では南九州以南の暖地に棲息する「オオカバマダラ」の仲間で、よく似た「カバマダラ」と云う種類の蝶がいますが渡りはしません。
「アサギマダラ」は日本に棲息する蝶では唯一の “ 渡り蝶 ” です。美しいうえ、珍しい生態を持っているために、思っていたよりも研究が進んでおりました。採取した個体にマーキングをし、別の場所で捕獲して飛翔距離や移動コースなどの調査が行われています。
「アサギマダラ」は春に南の島で生まれ、日本列島に沿って季節風などに乗り徐々に北上します。暑い夏は本州の涼しい山地で子孫をつくり、その子孫がより北を目指します。ときには北海道まで渡る個体もあるようですが、数は少ないようです。秋になると、そのまた子孫が南下を始めます。途中に立ち寄った地方に住みつくものもあるようですが、一気に南の島まで行きつく個体もあり、調査記録によると山形県から沖縄県与那国島まで2,246km(直線距離)を3ヶ月で渡った例があります。一日に数百kmを移動した記録もありますが、飛び方はパタパタとぎごちなく、力強さは感じられません。小さな体で何処にそのようなエネルギーを持っているのか、「オオカバマダラ」と同じように、子孫が先祖や親の辿った道(空)を迷わずに見つけられるのか、真に不思議な本能(遺伝子?)と云うしかありません。
私のような素人観察者には、まだ、まだ、不思議なことがあります。某研究者の調査によると、南の島で発生した「アサギマダラ」は『5月下旬の梅雨の季節で雨の多い時期に、「イジュ」の花に集まり、その数は数百匹を数え、その殆どが雌であった。殆どの雄は既に本土に向った可能性がある』と云うことでした。「イジュ」は亜熱帯に自生するツバキ科の中木で、5〜6月にかけて白く美しい花を咲かせますが、私は図鑑でしか見たことがありません。ただ、北アメリカ大陸の「オオカバマダラ」には、スケールでは比べようは無いのですが、意外に思った事は、雄・雌が別々の大集団で集まることと、ツバキ科の花の蜜を吸うことでした。
「アサギマダラ」は北へ行くほど数が少なくなります。私がこれまで出合った時は常に一匹で、複数では行動しない習性を持ち、また、吸蜜する花も限られていて、「ヒヨドリバナ」・「フジバカマ」・「セイタカアワダチソウ」のように、細かい花が密集して咲く植物に限られると考えていたのです。しかし、それは私の認識不足で、その他に「トラノオ」・「ネズミモチ」・「アザミ」・「ツワブキ」・「スナビキソウ」・「カモメヅル」も好むようで、年間を通じてエネルギー補給には事欠かないことも分かりました。
「アサギマダラ」の幼虫は、真にカラフルの体色をしており、人によっては美しいと思ったり、毒々しくて気持ちが悪いと敬遠するむきもあろうかと考えますが、大抵の美しい蝶は幼虫のときから色彩豊かなのです。食草は「カモメヅル」・「キジョラン」・「ガガイモ」・「イケマ」のような蔓植物ですが、特に注目することは、「イケマ」はアルカロイドを有する毒草でもあり、何故このような有毒植物を食べるのか興味深い事実です。蝶類の中には「ジャコウアゲハ」や「カバマダラ」の幼虫のように、外敵から身を守るために有毒植物を食し、体内に毒を蓄える種もいます。しかし、色々と資料を調べてみても、「アサギマダラ」の体内に毒を持っているとの記述は見つかりません。事実は如何なんでしょうか?。
広い面積の[ふなばしアンデルセン公園]内でも、「フジバカマ」が咲いているところは今回写真を撮ったこの場所だけのようでした。蝶の視力や臭覚は大変優れていると云われていますが、渡り途中の「アサギマダラ」がその機能だけでこの場所を発見できたのか?、素人考えですが、ひょっとしたら、自然の生物は体内時計遺伝子の中に祖先や親の体験もインプットできるのか?(少々大胆な発想?)。と、どんどん、疑問が生じてきます。

どうも、私のブログ、8月22付け『船橋北部周辺の動植物 “ 体内時計 ” 小考「カラスウリ」&「ニホンアマガエル」』で生き物の体内時計を取り上げてから、自然界の生命に関わる不思議な出来事は“体内時計遺伝子”の問題に発展させてしまう癖がついてしまったようです。が、今は自然の観察を続ければ続けるほどに、ますます、重要課題になってきたようです。


割り込み記事(その1):[宇宙飛行士の体内時計]
10月10日、某新聞に “ 体内時計 宇宙生活で正常化 ” と云うタイトルで、興味深い記事が掲載してありました。既にお読みになった方もいらっしゃると思いますが‥‥。
内容を要約しますと、「人間の1日の体内時計(概日リズム)は24時間より少し長めに刻んでおり、太陽光を見ることなどで修正している。宇宙航空研究開発機構(JAXS)の研究によると、宇宙飛行士の若田光一野口聡一さんら数人が国際宇宙ステーション(ISS)に約半年間滞在したとき、24時間の心電図計測を3回行い、地上での計測値と比較すると、ISSに滞在中の方が、24時間により近づき、正常化する傾向がみられた。ISSから帰還後に計測すると、元の概日リズムに戻っていた。予測では、地球を周回するISSは昼夜が45分で入れ替わるため、生体リズムが崩れて体力が低下し、免疫力が落ちると懸念されていた。正常化の理由は不明だが、ISS船内の照明は、一日の再現をするために昼は点灯、夜は消灯をされていたので、地球上より規則正しい生活が影響した可能性がある。」とのことでした。
感想:時々、テレビ番組などで自然界の生き物に奇形や異形な姿のものが生まれている、との報道がなされています。またまた、個人的な考えで恐縮ですが、自然環境の悪化が原因で、体内時計遺伝子に異状が生じているのではないか?、私たち人間も、また、心身ともにこのような状況に置かれているのではないのか?、これも自業自得?、とは、考えたくないのですが‥‥。


割り込み記事(その2):[郵便切手になった「アサギマダラ」]
「アサギマダラ」について調べているうちに、郵便切手にも取り上げられていることが分かりました。長年、切手蒐集を続けている友人に問い合わせをすると、25年ほど前(1986〜87年)に“昆虫シリーズ”として発売され、蝶だけでなく昆虫全般に亘って数十種が扱われており、全ての切手を所有しているとのことでした。昆虫の名前を挙げてもらうと、今では殆どが絶滅危惧種・準絶滅危惧種に指定されている希少種で、美麗種・特殊な生態の昆虫も含まれているらしく、興味津々、全てを見たいところですが、取りあえず「アサギマダラ」の切手データを頂き掲載しました(「見本」の文字は流用防止のため)。
感想:当時、何故この時期に“昆虫シリーズ”切手が発売されたか?、個人的な意見ですが、1980年代の初め頃から世界中で地球環境の悪化が取りざたされ始めました。環境省(環境庁)では生き物の調査をし、1991年(平成3年)に初めて“昆虫類レッドリスト”を発行しましたが、それに先駆けて、国は先ず郵便切手を売り出したのではないでしょうか?。調べによると、国のシンボル(国蝶)が数種の候補のうち「オオムラサキ」に決まったのは、この切手の発売がきっかけだそうですが、本当のところは如何なんでしょうか?。

参考写真:国蝶「オオムラサキ(切手の中で向って一番右側)


[アサギマダラ]
※オス
2011.10.20 [ふなばしアンデルセン公園]内で撮影。少し翅が痛んでいますが、何とか南の島まで渡って行けそうですね。


◆雄は後翅の肛角(付根の下角)に黒色の性班があります。


※メス
2010.11.02 [ふなばしアンデルセン公園]内の、上の写真とは別の場所で撮影。今年はこの場所には「フジバカマ」は見られませんでした。

◆雌は後翅の肛角(付根の下角)に黒色の性班がありません。


[参考写真:「アサギマダラ」のエネルギー源]
ヒヨドリバナ(サワヒヨドリ)」
8月中旬に[ふなばしアンデルセン公園]で撮影しました。株数が少なく疎らに生えているので「アサギマダラ」が吸蜜に立ち寄ることは期待できないようです。


「フジバカマ」
今回の記事の「アサギマダラ」と出合った花の舞台です。二抱えほどの群落ですが貴重な存在です。


トラノオ(ノジトラノオ)」
6月下旬に船橋北部の湿地沿いに数株が咲いていました。この辺りでは殆ど見られなくなり「アサギマダラ」が立ち寄るとは考えられません。


「アザミ(ノハラアザミ)」
春から夏にかけて咲く「ノアザミ」に似ていますが、「ノハラアザミ」は夏から秋に花をつけます。


ツワブキ
林の中に自生していましたが、まだ蕾です。これでは吸蜜できません。


※後日追加写真:開花した「ツワブキ」の自生種



トリカブト(オクトリカブト?)」
「ヤマトリカブト」に似ていますが、花の形や咲き方から「オクトリカブト」ではないかと思います。どんな毒草でも食べる虫がいることの説明のため掲載しました。
「アサギマダラ」と同日に[ふなばしアンデルセン公園]に自生していた一株を見つけました。「美しいものには毒(棘)がある」と云う諺の代表格ですが、この猛毒の植物を好んで食べる、「キンウワバ」と云う強かな蛾の幼虫がいます。
「毒にも薬にもなる(ならない)」と云う諺にもある、漢方薬の原材料でもありますが、新芽は「ニリンソウ」に似ているために、間違えて食べ、死んだ人がいると聞きました。素人は絶対に手(口)を出さないことです。